人工股関節・人工膝関節の最新知識
浅草病院人工関節センター長
東北海道病院非常勤医(2024年4月から)
望月 義人
人工関節は国産がいいの? それとも海外製?
テレビで日本製の人工関節が紹介されるたびに、『どこのメーカーの人工関節を使っていますか?』、『○○社の人工関節を入れてもらえませんか?』といったお問い合わせを受けます。テレビで紹介されると、非常に良いもののように思えますね。
どんな人工関節インプラントを入れるかは、各医師の考えに依存するところが大きいです。患者さんに選択肢として提示することは稀なことです。では、何を基準に医師は選んでいるんでしょう?
現在の日本国内の使用頻度
これは2017年に日本人工関節学会で調べられた、国内の人工関節のメーカー別の使用頻度です。下線を引いてあるのが日本メーカーです。正直決して多いとは言えません。それはなんでなのでしょう? 医師がインプラントを選ぶときには、その人工関節が長持ちするか、自分の手術方法に適しているか、筋肉や骨への損傷はどうか、人工関節手術用の器具は使いやすいかなど様々なことを考慮します。また、人工関節の一部(ポリエチレンライナーなど)がよくても、他の部分(カップやステムなど)があまりよくないと使われない傾向にあります。
一番重要なのは信用
人工関節は入れたら、人間の手足として毎日のように使うものです。同時に一生入れておくものです。そのため、5年や10年といった短い期間ではなく、何十年も問題が出ないことが重要です。いままでも全世界で数えきれない数の人工関節が発売されて、そして使われなくなっています。理論上非常に良いといわれていたインプラントが全くダメであったり、非常に良いインプラントをほんの少しだけ改良したら逆に悪くなってしまったなどということが数えきれないぐらい過去に起こりました。そのため、現在は人工関節を作るメーカー側も選ぶ医師側も非常に慎重になっています。その結果どうしても、全世界で広く使われているメーカーの、長期間使われていても問題なかったことが分かっているインプラントが選ばれやすい傾向にあります。そのため、国内メーカーの使用頻度がどうしても少ないのかもしれません。
国内産も悪くない
国内メーカーの人工関節にも長期の結果が出てきているインプラントもあります。サイズや形が日本人に合ったものであることが多いのも特徴的です。また、京セラのポリエチレンライナー『アクアラ』のように新しい工夫がされたインプラントも出てきています。今後使用頻度の増加が期待されます。
海外製は日本人にあうの?
よく、海外製は大きいのでは?や骨の形が違うのでは?という質問を受けます。近年海外のインプラントも欧米人の骨格だけを基準にせず、日本人も含めたアジア人も考慮されていることが多いです(もしくは、日本人の骨格を考慮したインプラントしか日本であまり使われていないです)
サイズは1~2mm刻みにあるなど、日本人にも合うように様々な工夫がされています。
海外製インプラントが良い✖
海外で使われて、いい結果のインプラントしか入ってこない〇
海外製のインプラントが全部良いというわけではありません。日本国内に入ってきているインプラントは、海外で長年使われて非常にいい結果が出ているものだけが入ってきているのです。実績があるため安心して選ぶことができるのがメリットで、海外メーカーのインプラントがよく使われている一番の理由はこれではないでしょうか。