人工股関節・人工膝関節の最新知識
浅草病院人工関節センター長
東北海道病院非常勤医(2024年4月から)
望月 義人
人工股関節とは
人工股関節は、変形性股関節症や大腿骨頭壊死や関節リウマチなどで、すり減った軟骨と傷んだ骨を取り除き、金属やポリエチレンなどでできた人工関節に置き換える手術です。人工股関節はカップ、ライナー、骨頭ボール、ステムで構成されています。臼蓋(骨盤にある窪み)側には金属製のカップが入り、カップの内側に軟骨の代わりとなるポリエチレンなどでできたライナーをはめます。大腿骨側には金属製のステムを挿入し、ステムの先端にボールがはまります。人工股関節置換術を行うと変形性股関節症や大腿骨頭壊死による股関節痛がなくなり、骨頭ボールによって動きが滑らかになるため活動的な生活が可能となります。股関節の破壊 が進み、変形の著しい場合には、すり減った骨を補充するために、 より多くの人工関節の部品が必要になります。
人工股関節置換術
人工股関節を入れてくる手術を人工股関節置換術といいます。傷んだ大腿骨頭や臼蓋の代わりに人工関節を入れてくるのですが、そのために大腿骨頭を切り取り、臼蓋を浅く削ってきます。臼蓋側にカップを入れてきます。カップは表面がざらざらしていて、圧着させる竹でも非常に強く固定されますが、さらに固定力を上げるためにスクリューで挿入してくることもあります。カップのざらざらした表面の隙間に、数か月かけて骨が育って入ってくることで非常に強固に固定されるようになります。
手術の様子
大腿骨側はステムを挿入してきます。大腿骨はストローや竹輪のように、中が空洞になっています。そこに適切なサイズのステムを挿入することでしっかりと嵌ってきます。ステムの表面もザラザラとしていて、骨が入り込むようになっています。カップやステムは2~4㎜間隔でサイズがあり、骨の大きさに合わせて入れることができます。
大腿骨の構造
手術のメリット、デメリット
この手術の一番のメリットは痛みがなくなって、日常では手術をしたことすら忘れて生活できることが非常に多いことです。他の関節(膝や肩など)、よりも術後の違和感が少なく、患者さんの満足度がとても高いのが特徴です。今まで、外出した夜にいつもずきずきしていた股関節や、階段や坂を上るのをためらっていた痛みが全部解消されます。
デメリットは、感染や脱臼などの危険があることや、手術した足が長くなってしまい、足の長さの差(脚長差)が出たりすることです。ただ、脱臼や脚長差の問題は、手術のアプローチでほとんど解決できます。アプローチというのは、股関節の骨を削ったり、人工関節を入れるために、どこの皮膚を切って、どの筋肉を切ったりよけたりして、関節周囲の袋(関節包)のどこをどれだけ切るかということです。筋肉を切らないMIS(最少侵襲手術)で行うと、脱臼や脚長差などはほとんど生じません。
人工股関節で重要なのはアプローチです。
MISのアプローチで行うことで、術後の問題はほとんど解消します。
ただ、MISは難しいので、MISの方法でしっかりいい向きに人工股関節を設置してこれる医者は限られています。